キタキューヘリテージ  Kitakyu Heritage

湖に浮かぶ西洋の古城【養福寺貯水池】

time 2013/02/27

暖かい風が吹き抜け、河原に菜の花が咲き誇り、少しずつ春の気配を感じる頃。
また訪れたい場所がある。
桜の咲く頃、一年に一度、数日だけ普段は入る事の出来ない扉が開く。

八幡西区養福寺。
住宅街に鬱蒼とした森がその姿を隠し、まるで時を止めているかの様だ。

【養福寺貯水池(ようふくじちょすいち)】だ。
官営八幡製鉄所の製鉄用水の為、河内貯水池と同時進行で建築された貯水池で、現在も製鉄所(現在は新日鐵住金)の管理だ。
現役の取水施設の為、普段は一般開放されておらず、桜の咲く季節にだけ”花見一般開放”として鉄の扉が開かれる。
概ね4月初めから2週間程度、その年によって変わるので注意が必要。

さて、この貯水池の竣工は1927年(昭和2年)
昭和元年が1926年の12月25日から31日までだった事を考えると、昭和の始まりと同時に産声を上げた事になる。
貯水池、つまりダムな訳だが、当時の国家的事業である製鉄と”官営”の名の下に作られた施設である為、とにかくその多額の予算をつぎ込んだ、凝ったデザインの美しさに目が奪われる。
これは八幡製鉄所の土木部長であった、沼田尚徳技師の美学によるものが大きいと思われる。

沼田尚徳(ぬまたひさのり)技師 〜東田第一高炉説明板より〜
構造自体はシンプルな重力式ダムであり、堰堤上部の調整池と下部の減勢池に分けられる。
上部の調整池。



↑このラッパみたいなのから、遠賀川から汲まれた水がやってくるのだ。
おや、今日は水が出てないぞ、と思ったら・・・

出て来た!
こんな物もある。

「分水契約書」
簡単に言うと、この村からの水を製鉄所で使っていいよーっと言うものだと思う。
難しくてわからんかった(汗)
堰堤上部は立ち入る事が出来ないが、遠くからでもその凝った作りがわかる。


半円状の取水塔には切り石が積まれ、玉石がきっちりと貼られている。

調整池のど真ん中には擬宝珠の様な石灯籠の様な物が・・・
さて、堰堤の下へ降りてみよう。

堰堤のカーブにそってアールを描く階段が、何かを予感させる。

見上げると高くそびえる堰堤は花崗岩を積み上げたもの。
圧巻である。

ここでまたもや行く手を阻まれるが、その先にある物に心を奪われる。

中世のお城??

屋上部分の隙間から今にも弓矢で狙われているかの様な意匠がステキ!
鉄筋コンクリート造の弁室なのだが、切り石と玉石で装飾されてとても美しい。
上部の取水塔とは違い真円形で、水面に浮かぶ姿には息も止まるほど。
迫り来る堰堤の迫力と対峙する様な穏やかさがそこにはある。
人によっては「ロールプレイングゲームの魔法屋」なんて言われる事もあるが、ちょっと滑稽にも見えるね。

この貯水池、双子の兄弟である河内貯水池よりかなりコンパクトであるため、散策もラクで楽しい。
注意深く観察すると、いろんな物に出会えるよ。

↑森の魔女の家っぽいけど、これは監視塔だったらしい。


内部を見ると解るように内側はコンクリート。
外側を自然石積みで装飾しているようだ。




先ほどのラッパの導水管の近くに石橋が。

全景は撮れなかったけど、赤煉瓦と自然石でこれまた凝った作りなのだ。

所々にBM(ベンチマーク 測量点)があるが、GPSも無かった当時の測量技術に驚かされる。
現在も自然流下で製鉄所に水が送られているそうだ。
さらには、河内貯水池と共に、建設にあたっての殉職者は一人もでなかったらしい。
当時この規模の工事では珍しい事だったのではないだろうか。

森の中に今も製鉄に使われる水を日々送っている【養福寺貯水池】
鉄鋼1トンにつき200トンの水が必要だとも言われる。
北九州に近代化をもたらした製鉄。
いくら国家的事業であるとは言え、これだけ意匠にこだわった物を作り上げる沼田技師のセンスには感動すら覚える。
もっとも、予算出すお役人が視察した際には「豪華過ぎ!」と怒られたらしいが(笑)

一年に一度、桜の咲く頃にまた会いましょう。
あ、でも当時は3000本植樹されたとも言われたソメイヨシノ。
現在は寿命迎えちゃってるのも多いようで、桜は比較的少なめですよ!
ま、気軽にオベント持って、この春は出かけてみませんか?

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Taka

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北九州市在住。ベスパとハーレー、両極端のバイク乗り。北九州を愛し、北九州の魅力の再発見に余念が無い。人と人、歴史の点と点、結びつければ歴史が紐解かれる。