2024/07/01
北九州の東の端、白亜の灯台が小高い丘で海を見守っていた。
初灯を1872年(明治5年)1月22日、現存する灯台では九州で一番古い灯台である【部崎灯台(へさきとうだい)】だ。
過去記事:受け継がれる灯火 【部崎灯台】
国内で初めての洋式灯台である観音埼灯台(神奈川県横須賀市)が1868年(明治元年)11月1日に起工したことにちなみ、毎年11月1日は「灯台記念日」として海上保安庁によって制定されている。
この日の前後で各地の灯台で灯台記念日のイベントを行なっているが、ここ部崎灯台でも概ねこの時期に、通常は公開されていない内部の様子を見学することができる一般公開を行なっている。
この日は2022年10月30日、晴れ渡る秋の空に白亜の灯台が映える。
海上保安庁の職員さんが普段は解放していない扉を開け、来場する人々に案内をしていた。
小高い丘に建っているため、手を伸ばせば届きそうなほどのサイズ感だが、内部を見られるのはとても貴重だ。
内部は一面放射状に石張りの床が貼られていた。
このエリアは外側に張り出している半円状の場所。
板張りの壁は近年のものっぽい。
いろいろ張り紙があるが、ここは地元のボランティアによって周囲の清掃や管理が行われているその紹介。
機会があれば参加したいなぁ。いろんな話も聞けそうだし。
奥に見えるのは暖炉。一階のこの場所にのみ暖炉があった。
今は無人だが、昔は灯台守りが常駐して毎夜毎夜の灯台を管理していた名残りだろう。
ちなみに無人化されたのは1981年(昭和56年)
ひとつ扉を潜れば太い柱が支える灯台本体の部分。右手にチラリと見えているのが鉄製の階段。
小さく急でやや弧を描く階段を登る。
上の階から見た画像。
ほぼ直角、階段というよりハシゴのような場所を足を踏み外さないように注意して登る。ロープは一般公開のために設置してくれたのかな。
なにせ非常に狭いため写真がとにかく撮りにくい!超広角レンズでなんとか写せるのも一部。
写真も超広角のため歪みが著しく、全容がなかなか伝わりにくい部分もあるかと思うが、そこら辺はぜひ一般公開の日にご自身の目で確かめていただきたい。
部崎灯台は3階建てになっている。
2階には灯台の土台となる部分がある。レンズを回転させる機器などがある階だ。
こちらは一旦素通りして、3階のレンズがある部屋へと向かう。
どーん!
この狭さ、伝わるだろうか?スマホの超広角レンズが写真の外側をかなり引き伸ばしているため、実際の形とは異なる。
6面をもつこのレンズは灯台特有のフレネルレンズだ。
フレネルとはこのレンズ構造を発明したフランスの物理学者の名に由来する。
ここではその構造については割愛するが(いや、難しいから説明しきらんって!)小さな光を複雑な反射や屈折を通し、より遠くへと届けることができる構造だそうだ。
ここ部崎灯台にあるフレネルレンズは、フランスの”ソーターハーレー社”製でなんと1894年製。
部崎灯台のレンズとしては二代目だそうだ。
初灯では石油式の不動光であったが、1895年(明治28年)この回転式レンズへと変更された。
光源はメタルハライドランプ。
ガスが注入された高効率かつ長寿命のランプらしいが、じきに高輝度LEDなど新時代の光源へと変わってゆくのではないだろうか。
上部のドームは鉄製でリベット留めされている。
海を見渡せる窓からは美しい海が。ここから見られる景色は一般公開の時だけ。
ちなみに山側は照らす必要がないので特徴的な三角形の窓ガラスはなく塞がれている。
海保の職員さんがレンズ室の中で説明をされていた。
この日は10月の終わりだったが、内部は温室のようで、暑いくらいだった。
この大きく重いであろうレンズを動かすのは2階部分にある電動モーター。
さぞパワーがいるのかと思えば、このレンズ、回そうとすれば軽い力で回る。
なんと、このレンズは『浮いている』
回転装置は水銀槽式回転装置とよばれ、この重たいレンズを液体金属である水銀に浮かせてあるのだ。
なので抵抗が極めて少なく、小さな力で回る。
これは国内の他の灯台でも一般的に使われている装置だ。ただ水銀は有毒物質であるため定期的に空気中の水銀濃度はモニタリングされている。
そしてその回転装置のさらに下に設置されているものは免震装置。
この様に地震が起きても逆方向へと動き、振動を吸収する仕組みだ。
海上安全の要でもあるし、歴史的にももちろん貴重。なによりとても大事にされているのがわかる。
とはいえ長き歴史のなかでは少しの傷も。何かぶつけっちゃった?
この地に腰を据え、海を見守ってきた歴史の重みを感じる。
2階からは外回廊に出られる。
室内には三角形のガラスが。用途は不明だったが割れた際に緊急に塞ぐためとか?
仮固定に使われている蝶ネジがやばいくらいかわゆい。
工具を使わず取り外すためのものなのでやはり緊急用の予備かな?
毎年一回、普段は見られない貴重な部崎灯台の内部を見られる機会。
公開の際は第七管区海上保安本部のHPに詳細が発表されるので要チェック。
Kitakyu Heritage
Write by Taka