キタキューヘリテージ Kitakyu Heritage 近代化遺産

和洋の趣【旧安川邸】(大座敷編)

time 2022/04/20

和洋の趣【旧安川邸】(大座敷編)

和洋の趣【旧安川邸】(本館棟編) では1938年(昭和13年)竣工の旧安川邸本館棟を紹介した。

本館の廊下を奥へと進むと、分厚い鉄の扉があった。
これは防火扉で、万一の火災の際延焼を防止するものだ。


◇◇◇

防火扉の先、廊下を挟んで西側は1912年(明治45年)に旧住居だった若松より移築された。
移築前の1896年(明治29年)には八幡製鐵所誘致のための初会合が行われたとされている。
東側はその後増築された。


大座敷は複雑に入り組んだ純日本風の建築だ。興味深いのが非常に高い天井。
しかし襖や障子は一般的なサイズで、身長176cmの筆者はやや屈んでくぐる。

◇◇◇

全部屋には畳が敷かれ、仏間や茶の間など典型的な日本の座敷が築かれた。


1913年(大正12年)に中国の革命家孫文が訪れた際に送られた「世界平和」の扁額が。
これから時代が移ろいゆく中で、この言葉の意味を幾人が想ったことだろうか。

菊の透かし彫りからは外の明かりが。

照明機器も凝っている。菖蒲柄だろうか?整備されている夜宮公園にも菖蒲園があるが、この地はかねてより菖蒲の名勝だったのかもしれない。

座敷からは庭園が美しく見えた。和室なので座った目線で見ることをお勧めする。

茶室には遊び心も感じさせる意匠がある。

欄間の不思議な造形は茶釜を模したものだという。

竹を複雑に組み合わせた格子窓から見える木はお茶の木だった。
随所に「茶」をイメージさせる意匠だ。

◇◇◇

生活を感じられる部分として印象的なのは風呂だった。

風呂自体は非常にシンプルだが、高い天井には千鳥が飛んでいた。湯気を逃す換気の意味合いもあったのではないだろうか。脱衣所のつくりなど興味深いところもあった。

重厚な内蔵。
分厚い扉が二重構造になっている。


大座敷はその名の通り、迷子になりそうなくらい非常に大きな座敷間が広がっている。

◇◇◇

安川敬一郎は1877年(明治10年)に安川商店を設立。数々の石炭関連企業を設立し財をなした。
電機や窯業、鉄道など北九州の発展に尽力し続けた。

その傍ら時代を担う者への教育への取り組みにも熱心で、巨額の私財を投じ【明治専門学校】を設立した。今の「九州工業大学」や「明治学園」へと繋がっている。

安川敬一郎は官営八幡製鐵所の誘致に際し第一線で交渉に臨んだ事でも名を残している。
「国の事業で得た財は国の為に使う」という強い信念が後世を育む土地を作った。

この邸宅は確かに贅沢な作りではあったが、「絢爛豪華」とは思えなかった。
どちらかといえばシンプルで、隣接する【旧松本家住宅】のような豪華さは感じられない。
そこにも安川敬一郎の人となりを感じてしまう。


時代は変わるも安川敬一郎の意志は学生たちに引き継がれている。

和洋の趣【旧安川邸】(蔵・庭園編)へ続く



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Write by Taka

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Taka

Taka

1981年生まれ 北九州市門司区在住 愛車はVolkswagen The Beetle / Vespa LXV125 / Moto guzzi V7(850)  かつてはカフェ勤務経験ありのコーヒー好き。調理師免許所有。街歩き 人間観察 ひとり旅 基本陰キャのコミュ障。悩みは飼い犬(ミニチュアピンシャー)が懐かない事。 人と人、歴史の点と点、結びつければ歴史が紐解かれる。


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