2024/07/01
和洋の趣【旧安川邸】(本館棟編) 和洋の趣【旧安川邸】(大座敷編)では、主に建屋を紹介した。
この【旧安川邸】の美しさは整えられた庭園にもある。
庭へと回ると1927年(昭和2年)竣工の洋館があり、安川敬一郎が晩年を過ごした住居とされている。
この洋館は老朽化のため解体される予定だったが、歴史的価値の高さから保存が決まった。
現在耐震工事中で、いずれ公開される予定だという。
その際はまたこちらで紹介したい。
大座敷内から見えた庭園は、回遊性を持たせてある。
中庭には芝生が広がり、奥の方で小高い山へ視線がゆく。
座敷から見ると広さと奥行きを感じさせる美しい庭園だ。
「小高い山」と表現したが、実は隣接する【旧松本家住宅】を含む平坦地は大規模な造成によって作られたものだという。散策路も設けられていた。
日本庭園なので灯籠が各所にある。訪れた際はその特徴や違いも感じてほしい。
縁側から巨大な平たい石があるが、これは沓脱石(くつぬぎいし)と呼ばれる。これだけ大きなものは珍しい。
飛石もなかなか立派だ。
◇◇◇
西端には蔵が2棟建っている。
この2棟の蔵は1912年(明治45)築。
外観が異なるのが興味深い。
鉄筋コンクリート造の【南蔵】と煉瓦造の【北蔵】だ。
【南蔵】は鉄筋コンクリート造だが、これは日本で2番目に古い鉄筋コンクリート造の建築物だという。
*追記-有識者によるとこれより古いコンクリート造の建築があるとの事。ここでは案内板の表記をそのまま記載したが、今後訂正があるかも知れません。
鉄筋は輸入と思われ、平らな板状のものを捻ったものを用いていることが近年の調査でわかっている。
【北蔵】は一見すると石積みのようだが、内部は煉瓦積み。装飾で石が貼られ石積みのように見せている。
構造こそ違うが、外観は同じで左右対称をなす双子の蔵だ。
どちらも屋根付きの廊下で住居と繋がっている。
◇◇◇
丘の上にはコンクリートで建てられていると思われる給水塔のようなものがあった。
これに関しては資料がない。
◇◇◇
庭の一角に柱がいくつか立っているが、これはここにあった【第二次本邸】の跡。
劣化が進み解体されてしまったが、残っていれば特徴的なアーチ状の間や、煙突も見えることから暖炉などもあったのだろうと模型で確認できる。
案内の方に聞く話では、この建物は戦後GHQに接収された際、土足文化が痛みを早めてしまったとのことだ。
残念でならない。
排水溝は煉瓦造り。
菱形の刻印煉瓦だ。年代等詳しい方、ぜひコメントください。
◇◇◇
公開にあたって再整備された透明の東屋や「鐡の記憶広場」と名付けられたモニュメントも設置された。
八幡製鐵所の誘致から一気に近代化が進んだ北九州、それに尽力した安川敬一郎を称えてのものだ。
今でこそ静かな時間が流れる庭園だが、かつては園遊会なども開かれ華やかだった。
今の北九州の礎を築いた安川敬一郎。
その生涯を想い、邸宅を訪ねてみてはいかがだろうか。
KitakyuHeritage
Write by Taka
コメント
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