キタキューヘリテージ Kitakyu Heritage 近代化遺産

和洋の趣【旧安川邸】(本館棟編)

time 2022/04/20

和洋の趣【旧安川邸】(本館棟編)

北九州市戸畑区

静かな時間の流れる夜宮公園の一角、現在につながる北九州の礎を築いた人物の邸宅があった。

【旧安川邸(きゅうやすかわてい)】だ。
その主人は安川敬一郎(やすかわけいいちろう)[1849年(嘉永2)~1934年(昭和9年)]
明治から大正期に数多くの偉業を残した。
この旧安川邸に隣接するのは【旧松本家住宅】、安川敬一郎の息子にあたる松本健次郎の住居だ。

森と静寂の迎賓館【旧松本家住宅】 (洋館編)
森と静寂の迎賓館【旧松本家住宅】 (日本館編)

北九州市が整備し、2022年(令和4年)に一般公開となった。

この地に住居として建設されたのは1912年(明治45年)、その年の7月30日から大正に年号が変わっているので、明治最後の年となる。
その邸宅を巡りながら安川敬一郎の偉業を辿ろう。

門を抜けると正面玄関が迎えてくれる。屋根付きの車寄せがあるロータリーだ。
ここは本館棟で、1938年(昭和13年)竣工、モータリゼーション以前ではあるが、すでに自動車化社会を見越している。
この本館棟は敬一郎の孫・寛氏が建てたものだ。

この本館棟は洋風建築となっている。
玄関にはこのようなモダンな丸窓がほどこされていた。

◇◇◇

玄関を入ってホールがあるが、その脇にはトイレが。
戦後GHQに接収された際に、洋式便所も設置されたという。東洋陶器株式会社(現TOTO)製。

便器には旧東洋陶器のロゴが。昭和初期製作のもの。

◇◇◇

ここは書生室、書生(しょせい)とは学問を学びながら屋敷に仕える者を言う。
6畳の質素な部屋だが、採光は十分で、窓際には暖房器具が備えられている。これは各部屋にもあるものだが、ボイラーで沸かした湯を循環させ、暖房としていたそうだ。

この部屋の壁には見慣れないものがあった。

これは仕組みはよく分かってないとのことだが、各部屋から呼び出しを受けた時に分かるようになっているとのこと。現代で考えると、飲食店の呼び出しボタンのようなものだ。

書生室の入り口には配電盤のようなものがあった。

◇◇◇

小さな小部屋には蛇口と流し台。ずいぶん低い位置にあるが、使途は不明。

このほか本館棟には2階もあるが、現在は公開されていない。

◇◇◇

こちらは応接室。窓からは中庭が見える。
窓際には書生室と同じ暖房器具があるが、それとは別に暖炉も備えられている。

タイル張りのこの暖炉を見る限りでは、薪を燃やせるような設備ではない気がするが…。
何やら端の方にコックがあるので、もしかしたらガスストーブのようなものを置いていたのかもしれない。

特徴のあるフローリングはいわゆるヘリンボーン、リズミカルさとモダンさも感じる。

市松模様に貼られた網代(あじろ)天井。
リズミカルな床に対し、整然とした感がある。木材の梁も角材と丸材を組み合わしていた。

ドア横に設置されたステンドグラスも印象深い。


この部屋を印象作るのがこのすりガラスに施された雪の結晶模様。12のそれぞれ異なる図柄がとてもおしゃれ。この当時の流行であった和洋折衷を取り入れつつも、各所の意匠にはこだわりを感じられる。
昭和初期のモダンさを演出する自慢の応接室であったのではないだろうか。

この先は分厚い鉄の防火扉で隔たれている【大座敷】へと向かう。

和洋の趣【旧安川邸】(大座敷編)
和洋の趣【旧安川邸】(蔵・庭園編)

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Write by Taka

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Taka

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1981年生まれ 北九州市門司区在住 愛車はVolkswagen The Beetle / Vespa LXV125 / Moto guzzi V7(850)  かつてはカフェ勤務経験ありのコーヒー好き。調理師免許所有。街歩き 人間観察 ひとり旅 基本陰キャのコミュ障。悩みは飼い犬(ミニチュアピンシャー)が懐かない事。 人と人、歴史の点と点、結びつければ歴史が紐解かれる。


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