2024/07/01
北九州市門司区。
関門橋を望む丸山吉野町(まるやまよしのまち)は山の麓に位置する静かな集落だ。
片側2車線の県道25号線が新門司、下曽根方面へと続いている。
この道は関門トンネルの開通に伴い、北九州東部の主要道として整備された。
いくつかの峠道はトンネルとして整備され、車の走る以前の昔は、急な峠で交通の難所だったと言う。
丸山吉野町と春日町(かすがまち)を結ぶ【桜トンネル】もそうだ。
下り線である【桜隧道】は1956年(昭和31年)に開通し、2001年(平成13年)に現上り線である【桜トンネル】が開通する前までは片側1車線の対面通行だった。
入口(丸山吉野町側)
出口(春日町側)
ちなみにトンネルの入口・出口はその道の起点に近い方が入口。
この場合丸山吉野町側が入口だよ。
豆知識だ!
今となっては片側2車線で別々のトンネルを潜り、快適に行き来が出来る。
その新しいトンネルの開通を見届け、隠居となった旧トンネルがある。
それは住宅地を少し登って行くと見えて来る。
【旧桜隧道(きゅうさくらずいどう)】だ。
現在の【桜隧道】と【桜トンネル】の初代にあたる為、ここでは【旧桜隧道】とする。
名を記す扁額は無いが、当時としては旧字の「櫻」だったのだろう。
竣工は1914年(大正3年)、生誕100年を超えたこのトンネルは、地図に載るトンネ
ルとしては北九州市内最古だと言う。
その名の通り、沿道には桜の木もあり、春には美しい桜の花が目を楽しませてくれるだろう。
坑口は石積み、電線で隠れてはいるがアーチの頂上には要石もしっかりある。
丸山吉野町側の坑口は北側に位置する為、苔むしていてどっしりとした落ち着きのある表情をしている。
内部は素掘りにコンクリート吹き付け。
1,5車線ほどだろうか、離合は難しそうだが、地域の生活道路として今も活用されているようで照明は明るく、旧トンネルにありがちな不気味さはない。
山からの湧水が豊かなようで、両側に側溝がある。
近年の補修跡と思われるが、多少表情を変える。
路面はコンクリートで、恐らく近年かさ上げされている。
春日町側に抜けてみよう。
石積みのポータルは両側とも同じデザインだが、こちらは南向きで日当りも良く、明るい印象だ。
出てすぐ滝のように流れて来る水場がある。
やはりこの辺りは山からの湧き水が多いようで、工事も水に悩まされたのではないだろうか?
その豊かな山水のおかげか、幅20cmはあろうかと言うでっかいカニがいた。
”モクズガニ”と思われるが、きっとこの地の主だろう。
挨拶をしてちょこっと遊んだ。
苔むした北側が男性的ならば、こちらは白い肌の女性的な印象もあるね。
このトンネルが掘られたのは旧門司市(丸山吉野町側)と東郷村(春日町側)の合併問題だったと言う。
直線距離自体は離れていなかった物の、桜峠は険しく、文字通り大きな壁となっていた。
しかしながらこの【桜隧道】が開通した事により交通の便が一気に良くなった。
1891年(明治24年)に門司駅(現門司港駅)が開業していた事も考えると、当時の人々の喜びは相当のものだったのではないだろうか?
1929年(昭和4年)、晴れて同地は合併し、門司市となりますます栄える事となる。
現在の【桜隧道】が1956年(昭和31年)に開通し、メインストリートの一線を退くも、今なお地域の大切な道路として大事にされている【旧桜隧道】
これからも、少し小高い位置から門司港の発展を見守り続ける事だろう。
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コメント
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すばらしい 行ってみたいものです。
by 抹茶 2013-09-15 22:20
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アクセスは容易なので、お近くへ行く際はぜひとも訪れてみてください!
by Taka 2013-09-15 22:39
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古い記憶ですが60年以上前のころだと思います。子供の頃、西鉄バスで通った事があります。幼い私の視界はバスの側面窓しか見えず、真っ暗でした。長い時間トンネル内で停車していた為、とても怖かったのを思い出します。(対向車の為、離合出来なかったのだろうと思います) 今でも年に一度くらいはこの旧トンネルへ回ります。
旧道巡りが好きなんです。 このトンネル以前の山越えの峠道も面白い道です。 面白く読ませて頂いています。
by ひげおやじ 2017-02-11 21:02
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貴重なお話ありがとうございました。
かつては西鉄バスが走っていたのですね、驚きです!
裏門司には使われなくなった旧道、廃道がいくつもあると聞きます。
地図にも載らないので、こう言った証言は貴重ですね。当時を知る方の記憶だけが頼りになるもので、私たちが知らない内に消えゆく道もあるのでしょうね。
ぜひ旧道巡り等されてブログにまとめられることがあれば、またこちらにもお知らせいただければと思います。
管理人Taka
by Taka 2017-02-12 19:31
昭和28年の門司大水害(28水害)の折、滝のような豪雨の中、西鉄バスが隧道の中で停まっていたという話を聞いたことがあります。
急傾斜の場所が多い門司では、土砂崩れが一番怖いですから、巻き込まれる危険性を考えると、乗客・乗務員にとってはこれが最も安全だったのかもしれません。
by 風 2020-04-11 17:04