キタキューヘリテージ Kitakyu Heritage 近代化遺産

心を潤す【旧帝国麦酒醸造棟】(門司赤煉瓦プレイス)

time 2013/04/21

心を潤す【旧帝国麦酒醸造棟】(門司赤煉瓦プレイス)

北九州市門司。
門司駅から山側を見れば美しい稜線の戸ノ上山(とのうえやま)が広がる。
海側へ出ると、再開発で整った街区の中にひときわ目立つ大きな赤煉瓦の建物が鎮座する。

【門司赤煉瓦プレイス(もじあかれんがプレイス)】だ。
ここが建築されたのは国内でのビールの需要が増え始めた頃の話だ。
明治時代最後の年、1912年(明治45年)に”帝国麦酒(株)(ていこくビール)”と言う株式会社を設立し、翌年の1913年(大正2年)に帝国麦酒(株)の醸造工場として竣工、創業を始めた。
この地に建つこの大きな煉瓦建築は当時から建つビール工場で、
【帝国麦酒醸造棟(ていこくビールじょうぞうとう)】だった。
「桜麦酒」「大日本麦酒」「日本麦酒」「サッポロビール」と名前を変えながら2000年(平成12年)まで実際にビールを作っていた。
【旧サッポロビール醸造棟】と表記されている事が多いかな。
どうも、その際はごちそうさまでした。

現在”門司赤煉瓦プレイス”として、現存する醸造棟・事務所棟・倉庫群などはギャラリーやレストラン、写真スタジオなどと姿を変えている。


今回紹介する一番大きな赤煉瓦の建物は”醸造棟”、実際にビールを作っていた工場だが、ここは開放されておらず、サッポロビールが移転した直後から時が止まったかの様だ。
年に数回行われる一般公開ではガイド付きで内部を見学出来る。


内部は薄暗く狭い。


7階建ての内部も当然煉瓦造り。


しかし内側は鉱滓煉瓦で被われているのに気付く。

安価な鉱滓煉瓦と強度がある赤煉瓦のハイブリッドだ!
どうしてこの様な建築になっているかはガイドに質問しても『?』だった。


天井を見上げるとかまぼこ型にアーチが連なっている。
これは鉄骨の梁に対してちいさな煉瓦アーチが組まれているそうだ。
モルタルで塗られているが、小さな煉瓦アーチが連なっていると思うと可愛いぞ。


多分ドアはなかったのでは?エレベーター跡。


瓩=キログラム
当時としては高層建築だった7階建て。

エレベーターが材料を最上階まで運び、製造工程に伴い上から順に下へと降りてくる。
最終的に出来上がったビールは1階で出荷されていたのだろう。
電気が貴重だったころの重力を使った『エコ』なシステムだった訳だ。


食品工場だけに衛生的なタイル張り。

一階から順に説明を聞いて来たので製造工程とは逆順になる訳だが、せっかくなので製造過程順に。


最上階は木材トラスと鉄骨で組まれている天井の高い空間だ。
麦を発芽させ乾燥室で焙燥する行程かな?


下の階へはこんな穴からストン。エネルギーは必要としない。


”麦汁濾過機”
麦芽や水などを混ぜた物をここで濾過。ドイツ製のマシーンだよ。
マシーン萌え、な方の為に写真集。(笑)






濾過された物は麦汁とかすに分かれ、次行程。


”仕込み釜” ホップを加え煮沸。
ビール特有の苦みと香りを。
次は発酵行程。


ここだけは重く分厚い扉の向こう。


でっかい蝶番は発酵の圧力にも負けない作り。


もう一枚隔てた部屋が”発酵室”
上部のランプは異常を知らせるもの。ビールとは言え異常発酵は危険なのだ。


中には大きなタンクがいくつかある。
この中で麦汁は酵母を加えられ発酵。
糖分はアルコールと炭酸ガスに変わり、ビールへと姿を変える。

公開されたのは一部だが、この他にも瓶詰め行程なんかもあるのだろう。



窓から見えるお隣は帝国麦酒旧事務所棟だ。


創業当時発売されたビールは『サクラビール』と言う名称だったと言う。
名前はいくつか変わりながらも、日本のビール文化を支え続けて来た赤煉瓦の【帝国麦酒醸造棟】
【門司赤煉瓦プレイス】として生まれ変わり、ビールの醸造こそもう行われていないが、心を潤すその姿は今なお健在だ。

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コメント

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    はじめまして。
    詳しい説明つきでしっかり見せていただきました。
    以前に訪れた事はあるのですが、中は普通には見れませんでしたので貴重な写真ですよね。
    鉱滓煉瓦と赤煉瓦の組み合わせの謎は是非知りたいところです。
    ところで、こちらでは鉱滓煉瓦と呼びますが群馬県の足尾銅山付近ではカラミ煉瓦と呼びます。
    どちらも似たようなもの(同じ?)ですが、地域によって呼び名が違うのも興味深いですね。

    by たくあん €2013-04-21 06:36

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    初めまして。
    コメントありがとうございます。
    カラミ煉瓦と言う物があるんですね、初めて知りました〜。
    銅の副産物ですか??
    鉱滓煉瓦とは趣の違う味のあるものですね。
    これはぜひ見てみたい(笑)

    by Taka €2013-04-21 10:05

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    あれってビール工場だったんですね。
    何度か前を通りましたが、子どもを追いかけるのに忙しくて、ロクに見てませんでしたσ(^_^; 今度はひとりでゆっくり見に行きます。

    by 空花 €2013-04-21 12:25

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    ぜひとも公開のある日に行ってみてください〜。
    公式サイトが更新されてないのでいつあるかは解らないですけど(汗)
    たまたま通った時にやってたんでラッキーでした。
    ウチは3歳の子供を片手で抱えながら昇り降りしましたよ(笑)
    筋肉痛必至です。

    by Taka €2013-04-21 12:58

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Taka

Taka

1981年生まれ 北九州市門司区在住 愛車はVolkswagen The Beetle / Vespa LXV125 / Moto guzzi V7(850)  かつてはカフェ勤務経験ありのコーヒー好き。調理師免許所有。街歩き 人間観察 ひとり旅 基本陰キャのコミュ障。悩みは飼い犬(ミニチュアピンシャー)が懐かない事。 人と人、歴史の点と点、結びつければ歴史が紐解かれる。


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